はじめに
2018年の旅館業法の改正によりこれまで種類が別々だった旅館営業とホテル営業が統合され「旅館・ホテル営業」となり、さらにこれまで旅館営業、ホテル営業ともにそれぞれ5室、7室と最低の客室数が決められていたのですがこれが無くなり1室から営業可能になりました。(参考:【旅館業法改正対応記事】ゲストハウス・民泊開業に必須な旅館業許可を取るまでのハードルって?)
要するにマンションの1室や一般的な戸建住宅でも旅館・ホテル営業の許可が取りやすくなったということです。
ただマンションの1室での営業許可については地域によって取れなくするための独自の制限をかけていたりするので(これについては別記事で取り上げます)今回は戸建住宅で旅館業の許可を取る時に「旅館・ホテル営業」で取る場合と「簡易宿所営業」で取る場合の主に建物面での違いについて取り上げていきます。
客室の定員と広さ
まず旅館・ホテル営業と簡易宿所営業の大きな違いは「宿泊客の定員」です。
旅館ホテル営業の収容人数は客室面積3㎡に1人が定員ですが簡易宿所営業は客室面積1.5㎡に1人となります。(ここで言う客室とは住宅でいう寝室とお考えください。)
つまり例えば客室が10㎡だった場合、旅館・ホテル営業の定員が3人なのに対し簡易宿所営業の定員は6人と倍泊まることができるということです。
現実的に考えて10㎡というと大体6畳くらいなので6畳に6人泊まるというのは現実的に考えづらいですが簡易宿所営業の方が客室の宿泊客の定員を増やすことができると考えて問題ありません。
次に「客室の広さ」です。
旅館・ホテル営業の客室は最低でも7㎡以上、ベッドを置く場合は9㎡以上必要なのに対し、簡易宿所営業は最低3.3㎡以上あればOKです。
狭い部屋を客室にしたい場合は簡易宿所営業の方が向いているということですね。
グループ貸切型にするなら旅館・ホテル営業
ここまでは「住宅の寝室=客室」というのを前提として説明しました。
ただ実は旅館業法の改正により旅館・ホテル営業であれば「1棟の戸建住宅=1つの客室」として許可がとれるようになりました。この場合他人同士が同時に泊まることはできずグループ貸切のみになります。
もっと噛み砕いて言うとグループ貸切型であれば簡易宿所営業より旅館・ホテル営業の方が許可が取りやすいということです。
理由は「水回りの設置基準」です。
旅館業法改正前までは戸建の建物で旅館業許可を取る場合、グループ貸切型であっても簡易宿所営業で取るしかありませんでした。あくまでも簡易宿所営業は他人同士が一緒に泊まることを前提としているためそれを想定した水回りの設置基準がある地域がほとんどです。
地域によって違いますが例えば・・・
・浴室の脱衣室は独立したものでなければいけない(洗面所と脱衣室は別々)
・収容定員が5人を超えると洗面設備が2つ以上必要
・トイレは必ず2個以上必要
などです。
特に脱衣室のところは戸建住宅はほとんど洗面脱衣室になっていて洗面所と脱衣室は別々になっていないためこの基準がある地域では悩みの種になっていました。それが旅館・ホテル営業であれば洗面脱衣室でもOKなので問題ありません。
その他の洗面設備やトイレについても地域によって違いはありますが旅館・ホテル営業の方がハードルが低いのは間違いないと思います。(とはいえ必ず保健所に確認は必要です)
以上の理由からグループ貸切型でお考えの人は旅館・ホテル営業で許可をとることがオススメです。
東京都では要注意の窓先空地
これは東京都限定になりますがとても要注意なので東京都でゲストハウス開業をお考えの方は是非お読みください。
東京都には「東京都建築安全条例」という建築基準法をさらに厳しくした条例があります。
その中に「窓先空地」という決まりがあり、火事が起きた時に安全に逃げられるように共同住宅などに定められています。そしてこれは簡易宿所も対象になります。
具体的に説明すると道路に面していない客室のある外壁と敷地との間に最低1.5mの避難通路を確保しなければならないというものです。
分かりづらいので下の図をご参照ください。
上の図を説明すると敷地と外壁の間が50cmしかないので道路に面した部屋以外は客室にできないということです。
ただこの窓先空地は簡易宿所は対象になりますが旅館・ホテルは対象になりません。
なので旅館・ホテル営業の場合は下の図のようになります。
このように旅館・ホテル営業では全ての部屋を客室にすることができます。
何だかおかしな話な気もしますがこれが現在の東京都の決まりになります。
私の予想では建築基準法の改正に伴いこちらの東京都建築安全条例も変わるのではないかと思っているのですが何か動きがあったら記事を書きたいと思います。
まとめ
今回、「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」の違いについて記事を書いていて旅館業法の改正によりその違いがかなり曖昧なものになっていると感じました。
そして曖昧な分、物件によってどちらが適しているかの判断がけっこう難しくなりそうです。保健所によっては丁寧に説明してくれるところもありますが全ての保健所が丁寧なわけではないので相談に行く前に事前に下調べをしていくとよりスムーズになるかと思います。その時にこの記事が少しでもお役に立てばとても嬉しいです!(^^)
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
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