はじめに
今回は「ここで民泊をやりたい!」という空き家を見つけて「さあ、これからリノベーションだ!!」という人に向けて書いています。
そんなあなたは
「自分でDIYして理想の宿を造っちゃおう!」
「デザイナーにお願いして超絶カッコ良い宿にしたいな!」
「仲の良いリフォーム会社にお願いしよう!」
このような事を考えていないでしょうか?
もちろんそれは凄く大事なことです。いわば自分の城を造るわけですから理想の民泊に思いを馳せるのは当たり前だと思います。
ただ理想を追う前に”やるべき事”をやらないと後々トラブルになる可能性が高くなってしまいます。逆に言うと”やるべき事”をしっかりやればトラブルを未然に防ぐことが出来るということです。
この記事ではその”やるべき事”について説明していくので是非最後まで読んでみてください。
営業の種類
まず民泊を始めるにはいくつかの営業の種類が法律で決められています。
大きく分けると
- 旅館業
- 住宅宿泊事業
- 特区民泊
の3つがあります。まずはここを説明していきます。
1つ目の旅館業についてですがこれは旅館業法という法律で宿泊施設として国に認めてもらう許可になります。国が宿泊施設として認めているので当然年間365日自由に営業することができるためこれで営業をしたがる人は当然多いです。
ただしこの旅館業は都市計画法という法律で営業できるエリアと営業できないエリアが決められており全部の地域で営業できるわけではないので要注意です。詳しくはこちらの記事(【旅館業法改正対応記事】ゲストハウス・民泊開業に必須な旅館業許可を取るまでのハードルって?)を読んでもらえればと思います。
2つ目の住宅宿泊事業は住宅宿泊事業法という”民泊新法”などと呼ばれている法律で届出をして営業をするものです。こちらは年間で180日まで運営することができますが地域によってはもっと営業できる日数が少ないところもあります。
この2つについてはこちらの比較記事(【徹底比較】旅館業VS住宅宿泊事業)でも説明しているのでより詳しく知りたければ読んでもらえればと思います。
3つ目の特区民泊についてですがこれは内閣府が決めた国家戦略特区という地域でエリアを決めて認められる営業のかたちになります。
営業日数の制限はありませんが宿泊日数を最低でも二泊三日以上にしなければならないと決められています。
具体的には新潟県新潟市、千葉県千葉市、東京都大田区、福岡県北九州市、大阪府でそれぞれエリアを決めて認められています。ただこれらの地域であれば全エリアで営業出来るわけではないので注意してください。
旅館業 | 住宅宿泊事業 | 特区民泊 | |
営業日数上限 | なし | 180日 | なし |
宿泊日数制限 | なし | なし | 二泊三日以上 |
建物用途 | ホテル・旅館 | 居宅、長屋、共同住宅 又は寄宿舎 | 居宅、長屋、共同住宅 |
住居専用地域での営業 | ✕ | ◯ | ✕ |
ここでは3つの営業の種類について説明しましたが、まずはあなたが宿をやりたい空き家が
- どの場所にあるのか?
- 年間でどれだけ営業したいのか?(1年通して営業したいのか旅行のハイシーズンのみの営業で良いのか)
- そもそもどの営業許可が可能なのか?
をしっかり確認してから自分の宿の営業スタイルを決めていくことをオススメします。
まずは保健所に相談
自分の民泊の営業スタイルが決まったらまずは保健所に相談に行きましょう。そこであなたの空き家で民泊をオープンするためにはどうすれば良いのか保健所でアドバイスをもらい必要な条件を確認します。
そこで意外と大事なのが行く前に必ず担当エリアの保健所を調べてから行くことです。全然違う保健所に行ってしまわないように注意しましょう。例えばあなたが宿をやる空き家が埼玉県秩父市にあるのであれば「秩父市 保健所 旅館業」と検索してしっかりと場所を確認しておきましょう。
次に必要な持ち物です。
- 空き家の今の状況が分かる図面
- 空き家の写真(屋外と室内の両方)
- 空き家の住所と面積が分かる資料
- 筆記用具(打合せ内容メモるため)
まず1つ目の図面ですがこれは必ず必要になります。これが無いと保健所の人もどうアドバイスをして良いか分からないからです。例えばあなたがお年寄りにスマホの使い方を質問されてもスマホが手元に無ければアドバイスのしようがないですよね?それと同じです。
そして2つ目の写真があると打ち合わせの内容がより濃くなり誤解も生まれにくくなります。屋外と室内の写真を撮っておき、忘れずに持って行きましょう。
そして先程書いた”営業の種類”について詳しく話すために3つ目の空き家の住所と面積がわかる資料が必要になります。できれば自治体が保管している”建築概要書”というものの写しを取ってから行くと確実です。どこで取れるかというと、例えば埼玉県秩父市の場合は「秩父市 建築概要書」と検索するとどこに行けば取れるのか確認することができます。
最後の4つ目ですがこれが実は一番重要だったりします。筆記用具です。これは準備した3つ目までの資料を元に保健所の人にアドバイスを受け、それをしっかりとメモをして記録に残すために絶対に必要です。これを”議事録”と呼んだりするのですがこの”議事録”を残しておけば後から保健所の人と言った言わないのトラブルを防ぐことができ、後々絶大な威力を発揮することがありますので必ず残すようにしましょう。
消防署で確認すること
保健所に相談に行きアドバイスをもらったらその次に消防署に行きます。これはあなたの空き家で民泊を始めるために必要な消防設備を確認するためです。そこで一つ注意しなければならないのですが、消防署は行く前に必ずアポをとってから行きましょう。何故かと言うと消防署の人は基本的に外に出ていることが多くアポをとらずに行くと担当の人がいなくて無駄足に終わってしまうということが少なくないからです。
そしてもう一つ要注意なのが担当エリアです。これは保健所と同じなのですが消防署の場合はより細かく担当エリアが別れているので検索するときは「秩父市~丁目 消防署」といったように細かい住所までしっかり調べてから行きましょう。ちなみに私も何度か全然違う消防署に行ってしまうというミスをしたことがあります。
次に必要な持ち物です。
- 空き家の今の状況が分かる図面
- 空き家の写真(屋外と室内の両方)
- 空き家の住所と面積が分かる資料
- 筆記用具(打合せ内容メモるため)
これは保健所と全く同じです。保健所と同じようにしっかりと”議事録”残しておくようにしてください。
ただし住宅宿泊事業の場合は保健所に提出する”事前相談記録書”として書式が決まっているためそちらを準備して消防署にハンコを押してもらう必要があるので要注意です。(事前相談記録書のフォーマット)
消防関係についてはこちらの記事(【超重要】旅館業許可取得のために抑えておくべき消防法)でより詳しく書いているので是非読んでみてください。
参考サイト:民泊を始めるに あたって – 総務省消防庁
建築課で法律チェック
最後に行くのが役所の建築課です。地域によっては”建築指導課”など名前が違うのですが分からない場合は検索しましょう。これまでの例と同じく埼玉県秩父市の場合だと「秩父市 建築基準法」で検索すると出てきます。ちなみに秩父市の場合は”建築住宅課”という名前のようです。
こちらで確認する内容は
- 非常用照明が必要な箇所
- ”用途変更”のハードルの高さ(旅館業でやる場合)
- 階段とその他の部分を壁と扉で分ける必要があるか(3階建で旅館業の場合)
1つ目についてですが災害などの非常時に建物が停電した時のために最低限の明るさを確保する”非常用照明”というものを取り付けなければなりません。これは宿泊しているお客さんが安全に避難をするために必要なものなのでしっかり役所の窓口で確認しましょう。
一般的には階段や通路に部屋から玄関までの明るさを確保するために設置することが多いので設置例の図を載せておきます。
2つ目が用途変更のハードルの高さです。
この用途変更が何かというと建物を新築した時の使い道を、別の使い道に変えるために必要な手続きのことです。
例えば住宅として新築された建物を旅館業をとって宿として使用したい場合はこの手続きが必要になり、その手続きを「建築確認申請」といいます。
この「建築確認申請」がけっこう厄介でこれをする場合は建築士事務所に依頼しなければならず、けっこうな費用が必要になります。しかもこれをするには建物を新築した時に国が指定した検査機関がしっかりと法律を守って建てられているか検査したことを証明する「検査済証」が必要になります。古い建物だとこの「検査済証」が保管されてないケースが多く用途変更を諦めなければならないケースがとても多いのです。
ただこの「建築確認申請」は建物の宿として使う部分の面積が200㎡以下の場合は必要ありません。なのでそこを踏まえてハードルがどれくらい高いのかを窓口でしっかり確認しましょう。場合によってはやり方が大きく変わるかもしれません。
これについてはこちらの記事(【ゲストハウス・民泊開業に追い風】建築基準法の改正内容って?)でより詳しく書いているので是非読んでみてください。
そして3つ目が”階段とその他の部分を壁と扉で分ける必要があるか”です。正確には階段と一部の廊下で”階段室”と呼ばれているのですがこれを建築基準法という法律で”竪穴区画”と呼びます。これはもし火事が起きて避難をすることになった時に煙が階段に来ないようにするために壁と扉で分けるのを法律で決めているということです。主に3階建で旅館業をする建物で必要になるので具体的にどんな壁や扉が必要になるのかしっかり確認しましょう。
こちらにも例として図を載せておきます。
そしてこれらを確認するために保健所と消防署と同じ持ち物が必要になります。特に3つ目については建築概要書を持って行くと話がスムーズに進められるので超オススメです。
- 空き家の今の状況が分かる図面
- 空き家の写真(屋外と室内の両方)
- 空き家の住所と面積が分かる資料
- 筆記用具(打合せ内容メモるため)
そしてもちろん”議事録”を残すのは忘れないようにしましょう。
おわりに
ここまでやってから”はじめに”で書いた
「自分でDIYして理想の宿を造っちゃおう!」
「デザイナーにお願いして超絶カッコ良い宿にしたいな!」
「仲の良いリフォーム会社にお願いしよう!」
をやればスムーズにリノベーションを進められる可能性がもの凄く高くなります。
できればこの記事の内容を踏まえてリノベーションのプランを決めてから図面を持ってもう一度保健所、消防署、建築課に行くのがベストです。
読んでみて「面倒くさいなぁ」と思ったかもしれませんがこれをやらずに見切り発車で工事を進めてしまい途中で工事内容を変更したりすると時間もお金も余計にかかってしまいます。そちらの方が「面倒くさい」と思いませんか?
そしてもし自分で全部やるのが難しいと思ったらLINEやお問い合わせフォームからご連絡いただければいつでも相談に乗ります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!!
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