はじめに
アナタがこれからリノベーションして民泊を始めようとしている空き家は何階建てでしょうか?
実はもしその空き家が3階建てであれば、2階建て以下の建物よりハードルが増えてしまいます。
「え?!一体どんなハードルがあるの?」
そう思ったアナタのために今回は3階建ての空き家を民泊にリノベーションする方法を解説していきます。
もし3階建ての建物で民泊を始めようと考えているようであれば是非最後まで読んでみて下さい!
許可・届出の種類
まず3階建てに関わらず民泊を始めるには行政に許可を得るか、届出を受理してもらわなければなりません。
大まかに説明すると2種類あり、1つ目が民泊新法と呼ばれる住宅宿泊事業の届出で、2つ目が旅館業の許可になります。
ここではこの2つがどんなものか解説します。
住宅宿泊事業(民泊新法)
まずは民泊新法についてですが、営業日数が年間180日までと決められており地域によってはさらに日数を制限しているところもあります。
こちらはこの中でさらに”家主同居型”と”家主不在型”の2種類があります。
家主同居型
この家主同居型はアナタ自身が住んでいる家に宿泊するお客さんを受け入れるかたちです。
「ホームステイ型」と言ったりもするのですがその方がイメージしやすいかもしれませんね。
家主同居型の場合はこの後に説明する家主不在型よりも格段にハードルが低く、届出も受理されやすいです。
当然といえば当然ですがアナタの住民票が届出をする建物にあることが絶対条件になります。
家主不在型
家主不在型はアナタがその建物に住んでいないかたちになります。
やはり多くの人は自分の住んでいる家に宿泊するお客さんを受け入れるのには抵抗があるため、このやり方をやりたがる人が多いです。
ただ、誰も住んでいない建物に人が泊まることになるため行政もそれなりに厳しい条件を用意しています。
どちらも行政への手続きはマスト
そして家主同居型、家主不在型どちらのやり方でも行政の手続きはマストになります。
建物の担当地域の消防署、保健所の条件をクリアする必要があるので必ず事前に相談するようにしましょう。
旅館業
続いて旅館業です。
旅館業の場合は旅館業法という法律で宿泊施設と認められているため当然年間365日営業することができます。
ただその分、民泊新法よりも条件は厳しくなります。
建物の用途
建物というのは「学校」や「工場」など法律で種類が決められています。
これが建物の「用途」と呼ばれており建築基準法で旅館業をする建物は「旅館・ホテル」というカテゴリーになります。
用途地域
そして都市計画法という法律で「用途地域」というものが決められており、それぞれの用途の建物を造れる地域と造れない地域に分けられています。
そして「旅館・ホテル」は造れる地域が限られています。
簡単に言うと旅館業許可が取れる地域と取れない地域があるということです。
旅館業許可OK | 旅館業許可NG |
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参考記事:【旅館業法改正対応記事】ゲストハウス・民泊開業に必須な旅館業許可を取るまでのハードルって?
消防設備
ここから本題の3階建ての建物のハードルについて解説していきます。
まず2階建て以下の建物との一番分かりやすい違いが消防設備です。
これを知らずに準備を進めてしまうと大変なことになってしまうのでしっかり押さえておきましょう。
自動火災報知設備
まず注意が必要なのが「自動火災報知設備」です。「自火報」なんて呼ばれたりしています。
これは「火災が起きた時に建物の中にいる人にそれを知らせる設備」と覚えてもらえればと思います。
警報を鳴らし、建物の中にいる人が火災が起きたことを知らずにノンビリしていて逃げ遅れるなんてことが無いようにするためのものです。
一般的に自動火災報知設備というのは下の図のように受信機、発信機、各部屋に設置する感知器というものがありそれらを配線でつないだものをいいます。
なんとなくイメージ出来ているかもしれませんがこの設備をいれるとなるとけっこうなお金がかかります。
そこで消防法ではある程度の大きさまでの建物であれば「特定小規模用自動火災報知設備」という通常の自動火災報知設備より簡単なものをいれれば良いとなっています。
これは各部屋に設置する感知器が無線で連動しており一番お金のかかる発信機、受信機、配線工事が必要なくなるため通常の自動火災報知設備よりかなり安くなります。
出典:能美防災株式会社
ただしこの特定小規模用自動火災報知設備は原則として2階建て以下の建物にしか認められていないんです。
ここで「あぁ3階建てだと自火報に高いお金かかるから諦めるしかないな」
と思ったアナタのために一軒家タイプの3階建てに対する特例があり、全ての部屋の扉に鍵が付いていなければ特定小規模の自火報でも良いということになっています。
もしアナタのやりたい民泊が1グループへの貸切型で、全ての部屋の扉に鍵を付けなければ自火報のお金を格段に安くすることができます。
ただし建物全体の面積(延床面積)が300㎡以上の場合や、ゲストハウスのような簡易宿所営業タイプで部屋に鍵を付ける場合は特定小規模の自火報は認められないので注意しましょう。
特定一階段
そしてもう一つ注意しなければならないのが特定一階段防火対象物に当てはまるかどうかです。
これに当てはまってしまうと通常の自動火災報知設備を建物全体に入れなれければならなくなってしまいます。
ではどういう建物がこの特定一階段等防火対象物に当てはまってしまうかと言うと、「3階以上の階を使用して民泊の営業をする場合で階段が1つしかない建物」となります。
分かりづらいので具体的に説明すると、例えば1階が一般の住居で2、3階が室内階段でつながっているメゾネット型のところで民泊の営業をするような場合です。
この場合3階にもう一つ避難に使用できる屋外階段などがない場合は建物全体に通常の自動火災報知設備をいれなければなりません。
ただ、3階にもう一つ避難に使用できる屋外階段があれば「特定一階段等防火対象物」にはならず建物全体に自動火災報知設備をいれる必要はなくなり、特定小規模の自火報を民泊として使用する部分に設置すればOKとなります。
工事費用の相場
そして一番気になる工事費用の相場です。
通常の自動火災報知設備の場合:150万円~200万円
特定小規模自動火災報知設備の場合:40万円~60万円
やはり特定小規模の自火報の場合は費用が大体1/3以下となり、圧倒的に安くなるので事前にしっかり確認してできるだけ条件を満たすように計画をして進めましょう。
参考サイト:民泊を始めるに あたって – 総務省消防庁
※2024年7月の消防法改正により特定小規模施設用自動火災報知設備の設置要件が緩和されました。
(参考記事:特小自火報の設置要件が緩和!2024年消防法の改正内容を徹底解説)
旅館業の場合に必要な”竪穴区画”
次はこれもとても大事な”竪穴区画”です。
この竪穴区画とは何かと言うと、下の図のように階段と一部の廊下を併せた”階段室”と客室などのその他の部屋が分かれている状態のことです。
これはもし火事が起きて避難をすることになった時、煙が階段にまわらないようにして安全に避難ができるようにするために、3階建て以上の建物で旅館業を営業する場合に必要だと建築基準法で決められています。
参考記事:【徹底解説】3階建て一軒家の竪穴区画
耐火建築物・準耐火建築物
この竪穴区画は普通の3階建ての住宅には必要ないと建築基準法で決められているため、設けられていないケースがけっこう多いです。
その場合新たに竪穴区画をする工事しなければならないのですが、これが特殊な壁や扉を新しく造らなければいけないのでかなりのお金がかかってしまいます。
そもそもアナタが自分で建物に竪穴区画がされているかどうかを判断するのはとても難しいと思います。
そこで使える裏技が”建物が耐火建築物なのか調べる”ことです。
何故これが裏技なのかと言うと、3階建ての耐火建築物は竪穴区画がされていないとそもそも建てることができないからです。
要するに建物が耐火建築物であれば竪穴区画は元々されているため特に手を加える必要がないということです。
逆にもし建物が準耐火建築物だった場合は新たに工事をして竪穴区画を設けなければいけない可能性が高いので、旅館業をとって民泊をする場合はその準備をしておきましょう。
ちなみに建物が耐火建築物なのか簡単に調べる方法が”建物が防火地域にあるか調べる”ことです。
理由は防火地域内にある3階建ての建物は普通の住宅であっても耐火建築物しか建てることができないからです。
なので3階建ての建物で旅館業をとって民泊をやりたい場合は、まず建物が防火地域にあるかを調べましょう。
住宅宿泊事業(民泊新法)の場合
民泊新法の場合はもし3階を宿泊するお客さんが使う前提で届出をする場合に竪穴区画をする必要があります。
なので3階についてはリネン室にするなどお客さんが使わないような形で届出するのがオススメです。
工事費用の相場
先程も少し説明しましたが竪穴区画をする工事は特殊な壁や扉が必要になるため費用はかなり高くなります。
200万円~300万円
高いですがこれ位の工事費用をかけてでも旅館業をとる価値があるのであれば新たに工事をするのも有りかもしれませんね。
まとめ
今回は3階建ての空き家を民泊にリノベーションする方法を解説しました。
できれば高いお金のかかる工事はしたくないと思うので、どのような営業スタイルにするのか決めるのにこの記事を参考にしていただけるととても嬉しいです。
ただ先程も言いましたが高いお金を払う価値があると思うのであればその工事をするのも全然有りだと私は思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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雑居ビルの4階や5階などで民泊をする場合、階段が1つしかないと特定一階段防火対象物に当てはまり建物全体に通常の自動火災報知設備を設置しなければならないなんてこともあるので事前にしっかりと確認してから進めましょう。